2023年6月、創業から55年を超えるタクマテクノスの歴史の中で初の生え抜き社長が誕生しました。事務方のエキスパートからトップに上り詰めた代表取締役社長の上村直也氏に、これからのタクマテクノスについてお話を聞きました。

全国を股に掛ける事務方のエキスパートが社長へ就任

―――タクマテクノスでのキャリアはどのようにスタートされたのでしょうか。

関西の大学を卒業後、石油元売り会社を経て、2003年に九州支社(現.九州支店)採用で入社しました。当社は、2年前の2001年にタクマテクノス東日本(現.本社)・タクマテクノス近畿(現.西日本支社)・タクマテクノス九州(現.九州支店)の3社が合併したばかりでしたので、まだそれぞれの企業文化の余韻が残っている時代でした。当時の九州支社は規模が小さかったものですから、業務課長・経理課長・総務課長を兼任するような、事務方の何でも屋のようなポジションでキャリアをスタートさせています。

九州支社で約2年働いた後に本社へ異動になりました。当時廃棄物業界の中でPFI(Private Finance Initiative)事業へ注目度が高まっており、タクマグループでもPFIの取り組みが増えていました。私は前職でも営業・生産管理・企画・法務と事務方を幅広くやっていましたので、そういった点が評価され本社での手伝いに指名されたのだと思います。

―――本社では具体的にどのようなお仕事をされていたのでしょうか。

今で言う事業推進本部の中で3つの仕事に取り組んでいました。

まずは経営補佐的な業務です。会社全体の経営方針やビジョンをとりまとめ、中長期経営計画の立案・作成をし、経営者が会社の方向性を決めるサポートをしていました。

次に事業計画の立案・推進です。民間が資金を調達するPFI事業と並行して、資金を調達する自治体から施設運営の委託を受けるDBO(Design Build Operate)事業の企画立案から提案を担当しておりました。この事業は親会社と合同で取り組んでおりましたので、タクマテクノス側の窓口という役割も担っていました。

最後はいわゆる社内の支援事業です。DBOを含め、営業部隊がお客様にアプローチしていくための提案の作成を支援し、幅広いご提案ができるようなサポートに取り組んでいました。

前述の通り何でも屋のポジションでしたので、いずれかの業務に片寄らずに満遍なく対応していました。

―――その後はどのような経緯で社長になられたのでしょうか。

本社にいる間にこうした業務に取り組み始め、その後は事業推進本部長を経て維持管理事業部長となりました。

維持管理事業部は、全国70ヶ所を超える廃棄物処理施設の運転に広く携わる部署です。お客様との契約の維持や現場の労務管理を通じて会社に利益を生む、いわゆるプロフィットセンター(収益部署)の長を3年務め、2023年6月に代表取締役社長に就任しました。

初の生え抜き社長が目指す、本社と並び立つ関係

―――タクマテクノス初のプロパー社長となりましたが、ご自身が社長に選ばれた理由をどのようにお考えでしょうか。

親会社と長く接点を持ってきましたので、グループ内のいろいろな方に認識していただいたのは大きいでしょうね。一緒に仕事をする中で言うことは言わせていただいてきましたので、印象はかなり強かったのではないでしょうか(笑)

ただし、親会社にとって煙たがられるような意見だけでなく、なるほどと思っていただける部分も多かったと思います。そういったやりとりの中でDBO事業を協力しながら進め、タクマグループ全体の中長期計画の中でタクマテクノスの存在感は示せていたと思いますので、何か可能性を感じていただけたのかもしれませんね。

―――生え抜き社長の誕生はタクマテクノスにとって大きな転換の始まりを予感させます。親会社からはどのような期待をされていると感じていますか?

今後タクマグループが廃棄物処理の業界で生き延びていくためには、タクマテクノスという会社の存在がこれまで以上に必要不可欠になっていくと考えています。ここ十数年の間で、プラントメーカーである親会社とタクマテクノスがジョイントベンチャーを組んでDBO事業に取り組むケースが急増しました。

今後もグループとしてそうした事業を展開し続けていくためにも、タクマテクノスが一子会社で終わってはいけないと考えておりますし、親会社からも独立した存在であることが求められていると感じています。親会社から子会社へ一方通行の関係ではなく、お互いに支え合える関係であること。また、親会社からの支援に頼らない独立した人材をタクマテクノスの中で育てていくこと。親会社と子会社という関係ではありますが、上下関係で終わらず、並び立つような存在になることを期待されているのは間違いないでしょう。

―――改めて、タクマテクノスという会社はどのような強みがあり、どのような役割を担っているのでしょうか。

廃棄物処理という仕事は、人間に例えるなら老廃物を処理して体をきれいに保つ「代謝」です。人間の体にとって必要不可欠な機能であり、社会においては人々の営みを支えるインフラのひとつとして重要な役割を担っています。

廃棄物処理を行う施設の運営には、大きく分けて3つの部門が必要です。ひとつは私が所属しておりました「維持管理事業部門」。廃棄物処理施設の運営を直接担当する部門です。次に、施設を維持・補修し健全な状態を保つ「設備工事事業部門」。設備は何十年という期間使われ続ける消耗品ですので、定期的な点検とメンテナンスで、長く安全に活躍し続けてくれる施設を維持する部門です。

そして「化成品事業部門」。廃棄物処理はごみを燃焼させるため、排気ガスの排出は避けられません。ごみの中には燃やすことで有害物質を生み出してしまうものが含まれている場合がありますが、そうした有害物質を除去し環境への負荷を極限まで抑えるための薬剤を販売・供給する部門です。

この3つの部門がそれぞれ協力しあうことで、我々は安全でクリーンな廃棄物処理を実現できています。ごみ処理は、いわば「うまくできて当たり前」の仕事です。社会の皆様がごみ処理に危険を感じることなく毎日過ごされているという事実は、我々の会社が社会にとって必要不可欠な存在であることの証明といえるでしょう。

持続可能な社会の実現に向け、誇りを持てる仕事をしよう

―――新社長の目から見て、タクマテクノスの良いところはどこにあるでしょうか?

創業から55年を超える歴史の中、一貫して人々の安全と持続可能な社会の実現に力を注いできた企業であると自負しています。お客様をはじめとする全てのステークホルダーに安心を与えることこそが我々のビジョンです。その実現に向けて全社一丸となって取り組む姿勢がある企業であると感じています。

現場に目線を下ろしてみれば、社員同士が協調性を持って働いている環境は、タクマテクノスの強みだといえるのではないでしょうか。廃棄物処理施設は班ごとに交代勤務をしながら24時間稼働させていますので、班内の人間関係が非常に濃厚になります。お互いの苦労が非常に身近な関係になりますので、自然と協力しあえるチームになっていくのは良い風土だと感じています。

近年は男性が積極的に育休を取得するケースが増えてきました。労働集約型の現場でひとり抜けるのは大変であることに間違いありませんが、それでも気持ち良く送り出し、お互いにサポートしあっている話を聞くと、誇らしい気持ちになりますね。

―――タクマテクノスとして今後取り組んでいく課題や目標があれば教えて下さい。

廃棄物処理施設に限った話ではありませんが、持続可能な社会の実現に向けた取り組みは、全ての企業に求められていると考えています。タクマグループとしても経営上の最重要課題のひとつとして捉えており、近年では再生可能エネルギーを生み出し活用するバイオマス発電プラントの製造・運用へ、積極的に参入しています。

環境問題への取り組みは、企業単体ではなく関わる全ての人が協力し、手を取り合って行うのが理想です。タクマグループもまた、再生可能エネルギーを利用できるボイラーの開発や環境負荷が低い薬剤の提供を行い、お客様へのご提案を通じて貢献に繋げたいと考えています。

―――社長として取り組みたい課題や目標はありますか?

社長就任後、お客様や各現場への挨拶回りをしている間に「これからタクマテクノスは変わっていくのではないか」というお声をたくさんいただきました。一つひとつのお言葉から期待して下さっているという思いと同時に、責任を強く感じている最中です。

これからタクマテクノスはどう変わっていくのか。私が考えるひとつのテーマが「新しい風を入れる」です。これからも社会貢献を続けられる会社であるためには、今までの取り組みに加え、IT化の推進やAIの導入、古くなった基幹システムの見直しといった革新を伴う技術の導入を進めなければならないと考えています。

そうした新しい風を入れるために、すでにフリーランスの方に入っていただき始めた部署もあります。今後はさらに、トレンドをつかみ最新技術をキャッチアップできる企業になるよう、さまざまな資質を持った方に入っていただきたいと思っています。

もうひとつのテーマが「社会に必要とされていると感じられる会社」です。繰り返しになりますが、私たちの会社は社会インフラの一部です。華美な仕事ではないかもしれませんが、「全てのステークホルダーに安心を与える」というビジョンの通り、誰かの役に立ち、生活を支える仕事であることは間違いありません。

私は、これから入社して仲間になってくれる方や、今すでに社内で活躍してくれている方全員が、社会に必要とされている誇りを持てる会社にしたい。今できていないわけではありませんが、もっと多くの方にタクマテクノスの仕事の素晴らしさを感じて欲しいと思っています。

私たちは、そこに自治体がある限り必要とされ続ける仕事をしています。やりがいを感じてもらい、やりがいを見つけてもらいながら多くの方と一緒に働いていくのが私の目標です。ぜひこれからも力を貸していただきたいと思っています。